From 90°to 90 ° |
ステンレスパイプの作る稜線が、立方体を意識させる最初の形態から出発し、単純な動きの中で様々な形を空間に描きながら、もとの形になるまでの動作を繰り返す。支点のあるものが動く場合、どんなものでも軌跡は曲線を描く。曲線を描くということは、その曲線上には無数の点が存在し、無数の時間的経過が含まれていることになる。だが、軌跡は目に見えないで変化していく形の集まりが目に入り、動きと時間と形の変化を全体的に認識することになるわけだが、元の90度から最後の90度に至るまでの動きを頭の中だけで想像しようとしても微妙な形の変化は知覚しにくい。非常に単純な形が位置を換えるだけなのに、何故不思議といえば、すべてが90度のアングルでできた形だからであり、もっと簡単に言えば、四角いものが丸く動いて四角に戻るからである。季節が春から知らず知らずのうちに夏になっているように、無数の形の集まりを90度から90度の中に含有し、時間というものを、経過というものを感じとり、又、見る人にもそれを感じてもらえたらと思う。動く彫刻の場合、少なくとも動きに関しては、視覚以外の参加が可能である。作る側と見る側との距離が近くにある。どちらかと言うと自分は難解な現代美術について語るというようなことは大の苦手である。理屈ぬきで楽しいものが作れたら満足である。じっとしているものと対話以上に、動いているものには、自分も経験(知覚を通してそのもの参加できるという点で嬉しい。 |